マクドナルドで僕らは食事をしたあと、ゲームセンターに行くことになった。
「ほっ! 命、そこでその攻撃くるか!」
「……ヒカル、これで終わらせる。……外れた」
長瀬と輝は両親世代のシューティングゲームをしていた。
二人ともゲームが上手だ。
あまり、ゲームをやらない僕は初戦に輝の手によってフルボッコにされた。
滅茶苦茶だ。
そして、今は、輝VS長瀬でやっているのだけど、どちらも引きをとらない強さで、ほぼ互角の戦いになっている。
さきほど、長瀬が操作する宇宙船が特大のビームを撃ったがそれは、輝が操作する宇宙船に当たらず、輝が微量のダメージを長瀬に当て続けて、輝が有利になった。
「命、残念だったな。この技で終わらせるっ!」
そう宣言した輝は特大のビームを撃つも、長瀬のカウンターによって自身に大ダメージを負い、自滅した。
フラグが立つ、フラグ回収ってこういうことなんだろう。
「どんまい」
「マジかよ……」
「次、これしたい」
長瀬が指さすのは、ダンスゲームだった。
「僕、体動かすゲーム嫌いなんだけど……」
「運動しようぜ!」
「えー……」
あんまり、好きじゃないのだけど、とりあえず、ダンスコーナーに向かうことにした。
先客の女子高校生らしき三人の女の子が、息の合ったステップを踏んでいた。
ひとりは三人の中で一番背が小さく、
「桜ちゃん、ダンス上手だねっ!」
サラサラとなびくセミロングの黒髪をはためかせながら、毎日が楽しいと言わんばかりの声調で話す。
「そんなん結菜だって上手いやん! でもやっぱり一番上手いんは……陽菜!」
関西弁が特徴的な腰辺りまである金髪の女の子は三人目の女の子の名前を呼ぶ。
「いやいや~、私そんなに上手じゃないよー。次の曲どうする?」
謙遜な態度のポニーテールの女の子は、次の曲を何にするか二人に聞く。
この三人を僕らは知っている。
「おーい! 坂本ー!」
バカみたいな声が三人の女の子をこちらに振り向かせた。
「あっ、不知くんっ! メイメイ! やっほー!」
「偶然やなぁ……。こんなとこで会うなんて」
「踊ってるところ見られてたんだ……。なんか恥ずかしい……」
「ちょっと恥ずかしいよね!」
「一生懸命踊っていたからかっこよかったよ」
「ありがとうっ!」
飯島さん達とまさかここで会うなんて。
「不知くん! タピオカ飲みにいこうよー!」
「えー……。あれって、美味しいの?」
飯島さんの提案に顔をしかめた。
カエルの卵みたいな形をしたまるっこいのは美味しいのだろうか。
「ええやん。不知初タピか。メイメイ、タピオカ飲んだことあるん?」
「ある」
「マジで? なんか意外やわ」
なにが意外なのか僕も長瀬も分からないが、僕らはゲームセンターからタピオカ専門店に向かうことになった。
ちなみに、長瀬に一回でもダンスゲームをやらないかと聞いたところ、
「別にいい。それよりも誰かと関わっているならそっちを優先した方がいい。また来たらアオイちゃんとヒカルとやればいい」
と言っていた。
ショッピングセンターから少し歩き、繁華街に来ると、そこにはスターリングバックスと同じくらい小綺麗でオシャレな雰囲気が漂うカフェがあった。
「ここだよっ! ここのタピオカ美味しいんだよねー!」
「うんうん! しかもコスパもいいからねー」
飯島さんと神田さんはこの店のプレゼンをする。
「へぇー。じゃあ、飲んでみようかな。初のタピオカ楽しみだよ」
「それじゃあ、不知くんはこれがいいんじゃない?」
飯島さんが進めるのは、黒糖抹茶ラテタピオカという飲み物だった。
「抹茶ねぇ……。うん、これにしよう」
「私もこれだね。私抹茶好きなんだっ!」
「聞こうとしてたのに先に言われた」
飯島さんと共に会計をしにいくと、レジの四十代くらいのおばちゃんが、
「あらー、デートかしら? 楽しんでね。ふふっ」
そんな勘違いをした。
それに少し戸惑うが、飯島さんは、
「いえ、この人、友達です」
と笑顔でいう。
それに少しだけ、寂しさを覚えた。
何故かは、分からない。
「はいっ! 不知くんの!」
「ありがとう」
飯島さんから、黒糖抹茶ラテタピオカを受け取ると、僕らは輝達が先に座っていたテーブル席に座った。
「どうだ? 初タピオカは?」
初めて食べるタピオカは、もちもちしていたが、柔らかすぎず、芯のある弾力が特徴的だった。
しかし、それよりもさすがは抹茶ラテだ。
スターバックスで飲んだ抹茶の飲み物より、抹茶の味が濃く、こっちの方が少し抹茶の苦味を感じる。
だが、飲めないことはなく、むしろ、この苦味が美味しい。
抹茶は飲んでこなかったけど、僕ってもしかしたら抹茶が好きなのかもしれない。
「すごく美味しいね。抹茶にハマってしまったかも」
「ふふふ……。不知くんを私色……もとい、抹茶色に染めてあげよう」
飯島さんは、不敵に笑いながら、これ美味しいよねと笑いかけてきた。
輝と長瀬は、タピオカミルクティーを、坂本さんと神田さんは、マンゴーの果肉がでかでかと乗ったタピオカマンゴーミルクティーを頼んでいた。
「そういや、桜ちゃん、不知くん、心崎くん、陽菜ちゃん、夏休みの宿題は順調? あと二週間くらいで夏休み終わっちゃうけど」
「まだやわー。あんなん終わらんって」
「もう終わった」
「蒼マジかよ……。俺もまだ。手すらつけてねぇ」
「あともう少しかなー」
それぞれ答える。
終わっていたのは僕だけだった。
「メイメイは、終わったの?」
「後もう少し」
「この前言おうとしてたんだけど、忘れちゃって。今度会う時にファミレスによって、勉強会しない?」
『勉強会、しようか。夏休み後のテストの時にさ。もちろん、飯島さんや坂本さん、神田さんも誘って』
僕が飯島さんに会ったら、誘うつもりだった。
だけど、飯島さんといることが楽しくてつい忘れてしまっていた。
「うん。しよう」
「おっ! 不知くんノリ気だね! さては、学年トップ狙う気だね!」
いいや、違うけど──でかかった言葉をすんでの所で飲み込む。
飯島さんと関わる前の僕なら、そう答えていた。
というか、今も答えそうになったけど。
僕は、クラスの男の子たちがノリが大事と言っていたのが分からなかった。
別にノリがよくなくても生きていける。
そう思っていたから、誰かと関わることをしてこなかった。
でも、誰かと関わることによって、こうしてノリや価値観が変わってきた。
だから、
「……そうだね。余裕で取らしてもらうよ」
ニヤリと不敵に笑ってそう答えた。
「そうはさせないよー! 次こそトップ狙うからね」
「勝負だね」
「だねー!」
僕らはそう言って、笑い合う。
「んじゃ、俺は蒼センセーに見てもらおっかな。ついでに命先生ー! 頼む教えてー!」
輝が僕と長瀬に絡んできた。
これも少し前なら、流すか鬱陶しがる所だろう。
「仕方ないなぁ……。あ、でもノート代とお菓子代は払ってね。授業料ってことで」
「いや、パシるなよ!」
思った通りに輝のツッコミが入ってくる。
「アオイちゃん、成長した」
「蒼君ってこんなに面白かったっけ……? 普通に面白そうな人だとは思っていたけれど、こんな事言う人だっけ?」
「不知くんは、変えたんだよ。きっと私たちと出会って。……そうだといいな。本当に皆で過ごすと楽しいねっ!」
「そうだね」
僕は自分の気持ちにまた素直になれた。
こうして、輝たちと出掛けた時間は、飯島さん達と偶然にも会ったことにより、またひとつ楽しい夏の思い出となった。
「ほっ! 命、そこでその攻撃くるか!」
「……ヒカル、これで終わらせる。……外れた」
長瀬と輝は両親世代のシューティングゲームをしていた。
二人ともゲームが上手だ。
あまり、ゲームをやらない僕は初戦に輝の手によってフルボッコにされた。
滅茶苦茶だ。
そして、今は、輝VS長瀬でやっているのだけど、どちらも引きをとらない強さで、ほぼ互角の戦いになっている。
さきほど、長瀬が操作する宇宙船が特大のビームを撃ったがそれは、輝が操作する宇宙船に当たらず、輝が微量のダメージを長瀬に当て続けて、輝が有利になった。
「命、残念だったな。この技で終わらせるっ!」
そう宣言した輝は特大のビームを撃つも、長瀬のカウンターによって自身に大ダメージを負い、自滅した。
フラグが立つ、フラグ回収ってこういうことなんだろう。
「どんまい」
「マジかよ……」
「次、これしたい」
長瀬が指さすのは、ダンスゲームだった。
「僕、体動かすゲーム嫌いなんだけど……」
「運動しようぜ!」
「えー……」
あんまり、好きじゃないのだけど、とりあえず、ダンスコーナーに向かうことにした。
先客の女子高校生らしき三人の女の子が、息の合ったステップを踏んでいた。
ひとりは三人の中で一番背が小さく、
「桜ちゃん、ダンス上手だねっ!」
サラサラとなびくセミロングの黒髪をはためかせながら、毎日が楽しいと言わんばかりの声調で話す。
「そんなん結菜だって上手いやん! でもやっぱり一番上手いんは……陽菜!」
関西弁が特徴的な腰辺りまである金髪の女の子は三人目の女の子の名前を呼ぶ。
「いやいや~、私そんなに上手じゃないよー。次の曲どうする?」
謙遜な態度のポニーテールの女の子は、次の曲を何にするか二人に聞く。
この三人を僕らは知っている。
「おーい! 坂本ー!」
バカみたいな声が三人の女の子をこちらに振り向かせた。
「あっ、不知くんっ! メイメイ! やっほー!」
「偶然やなぁ……。こんなとこで会うなんて」
「踊ってるところ見られてたんだ……。なんか恥ずかしい……」
「ちょっと恥ずかしいよね!」
「一生懸命踊っていたからかっこよかったよ」
「ありがとうっ!」
飯島さん達とまさかここで会うなんて。
「不知くん! タピオカ飲みにいこうよー!」
「えー……。あれって、美味しいの?」
飯島さんの提案に顔をしかめた。
カエルの卵みたいな形をしたまるっこいのは美味しいのだろうか。
「ええやん。不知初タピか。メイメイ、タピオカ飲んだことあるん?」
「ある」
「マジで? なんか意外やわ」
なにが意外なのか僕も長瀬も分からないが、僕らはゲームセンターからタピオカ専門店に向かうことになった。
ちなみに、長瀬に一回でもダンスゲームをやらないかと聞いたところ、
「別にいい。それよりも誰かと関わっているならそっちを優先した方がいい。また来たらアオイちゃんとヒカルとやればいい」
と言っていた。
ショッピングセンターから少し歩き、繁華街に来ると、そこにはスターリングバックスと同じくらい小綺麗でオシャレな雰囲気が漂うカフェがあった。
「ここだよっ! ここのタピオカ美味しいんだよねー!」
「うんうん! しかもコスパもいいからねー」
飯島さんと神田さんはこの店のプレゼンをする。
「へぇー。じゃあ、飲んでみようかな。初のタピオカ楽しみだよ」
「それじゃあ、不知くんはこれがいいんじゃない?」
飯島さんが進めるのは、黒糖抹茶ラテタピオカという飲み物だった。
「抹茶ねぇ……。うん、これにしよう」
「私もこれだね。私抹茶好きなんだっ!」
「聞こうとしてたのに先に言われた」
飯島さんと共に会計をしにいくと、レジの四十代くらいのおばちゃんが、
「あらー、デートかしら? 楽しんでね。ふふっ」
そんな勘違いをした。
それに少し戸惑うが、飯島さんは、
「いえ、この人、友達です」
と笑顔でいう。
それに少しだけ、寂しさを覚えた。
何故かは、分からない。
「はいっ! 不知くんの!」
「ありがとう」
飯島さんから、黒糖抹茶ラテタピオカを受け取ると、僕らは輝達が先に座っていたテーブル席に座った。
「どうだ? 初タピオカは?」
初めて食べるタピオカは、もちもちしていたが、柔らかすぎず、芯のある弾力が特徴的だった。
しかし、それよりもさすがは抹茶ラテだ。
スターバックスで飲んだ抹茶の飲み物より、抹茶の味が濃く、こっちの方が少し抹茶の苦味を感じる。
だが、飲めないことはなく、むしろ、この苦味が美味しい。
抹茶は飲んでこなかったけど、僕ってもしかしたら抹茶が好きなのかもしれない。
「すごく美味しいね。抹茶にハマってしまったかも」
「ふふふ……。不知くんを私色……もとい、抹茶色に染めてあげよう」
飯島さんは、不敵に笑いながら、これ美味しいよねと笑いかけてきた。
輝と長瀬は、タピオカミルクティーを、坂本さんと神田さんは、マンゴーの果肉がでかでかと乗ったタピオカマンゴーミルクティーを頼んでいた。
「そういや、桜ちゃん、不知くん、心崎くん、陽菜ちゃん、夏休みの宿題は順調? あと二週間くらいで夏休み終わっちゃうけど」
「まだやわー。あんなん終わらんって」
「もう終わった」
「蒼マジかよ……。俺もまだ。手すらつけてねぇ」
「あともう少しかなー」
それぞれ答える。
終わっていたのは僕だけだった。
「メイメイは、終わったの?」
「後もう少し」
「この前言おうとしてたんだけど、忘れちゃって。今度会う時にファミレスによって、勉強会しない?」
『勉強会、しようか。夏休み後のテストの時にさ。もちろん、飯島さんや坂本さん、神田さんも誘って』
僕が飯島さんに会ったら、誘うつもりだった。
だけど、飯島さんといることが楽しくてつい忘れてしまっていた。
「うん。しよう」
「おっ! 不知くんノリ気だね! さては、学年トップ狙う気だね!」
いいや、違うけど──でかかった言葉をすんでの所で飲み込む。
飯島さんと関わる前の僕なら、そう答えていた。
というか、今も答えそうになったけど。
僕は、クラスの男の子たちがノリが大事と言っていたのが分からなかった。
別にノリがよくなくても生きていける。
そう思っていたから、誰かと関わることをしてこなかった。
でも、誰かと関わることによって、こうしてノリや価値観が変わってきた。
だから、
「……そうだね。余裕で取らしてもらうよ」
ニヤリと不敵に笑ってそう答えた。
「そうはさせないよー! 次こそトップ狙うからね」
「勝負だね」
「だねー!」
僕らはそう言って、笑い合う。
「んじゃ、俺は蒼センセーに見てもらおっかな。ついでに命先生ー! 頼む教えてー!」
輝が僕と長瀬に絡んできた。
これも少し前なら、流すか鬱陶しがる所だろう。
「仕方ないなぁ……。あ、でもノート代とお菓子代は払ってね。授業料ってことで」
「いや、パシるなよ!」
思った通りに輝のツッコミが入ってくる。
「アオイちゃん、成長した」
「蒼君ってこんなに面白かったっけ……? 普通に面白そうな人だとは思っていたけれど、こんな事言う人だっけ?」
「不知くんは、変えたんだよ。きっと私たちと出会って。……そうだといいな。本当に皆で過ごすと楽しいねっ!」
「そうだね」
僕は自分の気持ちにまた素直になれた。
こうして、輝たちと出掛けた時間は、飯島さん達と偶然にも会ったことにより、またひとつ楽しい夏の思い出となった。