「心崎君! メイメイ! ばいばーい!」

「また学校でなー! 心崎ー!」

「輝君じゃあねー!」

 2、3時間くらいスターリングバックスで話したあと、解散することになった。

「おう、皆今日はありがとうな!」

「……ばいばい」

 輝はおおげさに手を振って、長瀬はいつも通りそっけなく返事を返した。

 ちなみに、メイメイとは飯島さんが考えた長瀬のあだ名だ。

 他にも、「メイちゃん」、「メイサ」や「メイっち」などでていたが、一番始めに飯島さんが言った「メイメイ」がまだマシと長瀬に言われたことから、彼女のあだ名はメイメイとなった。

 ちなみに、輝がメイメイと呼ぶと、

『ヒカルは普通にメイでいい。アオイちゃんも……め、メイメイって呼ぶの禁止』

 自身のことをあだ名で呼ぶのを恥じらっていたが、輝がその顔可愛すぎだろと呟くと、肩をパンチされていた。

 ほのぼのとしたカフェに似合わない結構痛そうな音が鳴っていた。

「それにしても、メイメイやばかったよな……。いいなぁ。あの子、(よめ)に欲しいわ」

 坂本さんの言葉に思わず、えみがこぼれてしまう。

「……ふふっ。なんだよそれ……」

 静かになってふと横を見ると、三人が口を開いて、僕を見つめていた。

「どうしたの?」

「いや……不知くんが笑ったって思って……。笑顔、可愛いなって思って」

 飯島さんの語彙力崩壊していない?

 というか僕の笑顔って可愛いんだ。

 出来れば男の子だからかっこいいがよかったけれど。

「不知って笑うんや……」

「ちょっとまって、坂本さん、僕のことなんだと思ってるの?」

「え……年中無休で真顔を決めてると思ってた」

「そんなに、普段表情筋死んでいるの?」

 うんうんと飯島さん達はうなずく。

 そこは否定してほしかった……。

「それに、蒼君、返しが面白いねー! そんなに面白いとは思わなかったよー。いつも、本ばかり読んでて近づきがたかったから……」

「でしょでしょ! 不知くんってとっても面白くて、優しいんだよっ!」

「……なんで飯島さんが自慢気なの……」

 いつもに増して、僕は喋っている。

 こんなに喋ったのは久しぶりだし、それに僕が会話を成り立たしているのがたまらなく嬉しい。

 こうなれたのも、飯島さんのおかげだ。

 彼女に会えて、本当によかった。

 僕はこの日、確かな感謝の思いを感じた。

 それが、別の感情にすぐに変わることを知らずに。