スターバックスには、輝と長瀬がいた。
「おおー! 心崎! ひさしぶりやな! えっと、その子が例の彼女なん?」
「おう、そうそう。えっと、そのセミロングの子、名前なんていうかな? 俺、心崎輝。よろしく」
「飯島結菜です。よろしくね! そっかぁ……。この人が不知くんの友達の……心崎くんかぁ」
「よろしく、飯島。それにしても、蒼にもやっと女友達出来たのか。よかったな、命」
輝は長瀬の肩をぽんと叩いたが、それを彼女は振りほどいた。
「……やめて。ヒカル、外ではボディタッチ禁止。アオイちゃん、ひさしぶり。元気だった」
長瀬は少しカタコト混じりの日本語で話す。
彼女は、これが素なのだ。
そして、語尾が上がっていないため、「僕が元気」だということを言っているだけと捉えられるが、彼女は長年の付き合いだから僕は分かる。
彼女は、僕に聞いているのだ。
「元気だよ。そっちは……問題無さそうだね」
「そう。ヒカルがべたべたくっついてきてウザい」
「いやいや、彼氏にうざいってそこどうやねん‼」
坂本さんのツッコミが笑いをもたらした。
そこへ、店員さんが次お待ちのお客様と声をかけたので、一度僕らは購入するために、レジに向かった。
輝と長瀬は席をとってくれている。
昔から、彼らは気が利く。
「不知、あんたスタバ行ったことある?」
くるりと回れ右をして、坂本さんは僕に尋ねた。
「ない。オススメってある?」
え? なんでそんなに露骨に顔をしかめるの? そんなまずいことなの?
「うーん、無難なものの方がいいよなぁ……。抹茶飲めるん?」
「飲めるよ」
「んじゃ、抹茶フラペチーノだねっ! あれ私も好きだよっ」
飯島さんは、いつの間にか頼んでいた抹茶フラペチーノとやらをふたつ手にしていた。
生クリームが、のっかっていて見るからに甘そうだ。
飯島さんからそれを受け取り、輝たちが取っていた席に移動し、いざ、ひとくち。
「不知くん、どう? 美味しい?」
飯島さんから、期待のまなざしがかかる。
彼女の目がワクワクと言っているように見える。
ひとくち飲むと、抹茶の甘味が口のなかに溢れる。
クリームは甘ったるくなく、それでいて優しい甘さが抹茶の甘さとマッチしている。
「おいしい……」
世の中にこんな美味しい飲み物があったのか、なんで今まで飲んでいなかったのかと思うくらいだ。
そうつぶやくと、飯島さんはしてやったりと言わんばかりに笑っていた。
「心崎、彼女の名前なんていうん?」
「あぁ、この子は長瀬命。マジで可愛いからよ」
「よろしく」
長瀬はぺこりとおじぎをする。
相変わらずの塩対応だが、彼女がこうなったのには、ある過去があるからだ。
昔も、飯島さんほど明るい性格ではなかったものの、かなりクールな性格だから異性から好意を寄せられることがあった。
だが、同性の関係は、良好とは言えなかった。
その態度が癪に触ったらしく、同性より異性の僕といる事が多かった。
小学校高学年になると、僕と長瀬は付き合っているだの、恋愛関連でいじられるようになる。
そのいじりの中心人物だったのが、輝だった。
この時は、輝に対しては敵対というか関わらないようにしていた。
輝は、このときのことを振り返って、テングになっていたと話した。
では、僕らをいじっていた輝となにがあって関わりを持つようになったか。
それは、ある日、輝が校庭の花壇をうっかり踏んでしまったときのことである。
そのせいで、彼はそのことをばかにされるようになる。
男の子のリーダー格であった輝はたったひとつのミスによって、その地位から落ちてしまったのである。
その日から、僕らのいじりはなくなったが、輝が次にいじられるようになった。
ある日の体育の時間で、三人一組をつくるようにいわれた。
皆集まってグループを作っていく中、僕は忘れられ、長瀬は無視されて、輝は煙たがられて、そうしてこの出来上がったのが僕らの三人グループである。
最初、輝はしぶしぶ僕らと関わっていたが、さすがは元リーダーである。
次第に、このグループのまとめ役になっていた。
それだけでは終わらなかった。
中学に入学した頃、輝は長瀬に告白した。
そのときも長瀬は無表情だったが、いつもと違っていたのは口角があがっていたという事らしい。
それからは、恋人としての彼らを見てきた。
手を繋いだり、抱き合ったり。
長瀬は口では、嫌がっているものの、口元がゆるんでいるのを見ると、やはり嬉しいのだろう。
一度、長瀬に輝の告白をなぜOKしたのか聞いたことがある。
彼女は、無表情のまま、
「なんとなく」
と答え、
「アオイちゃんも、早く彼女つくったほうがいい」
と余計なことまで言われた。
別に彼女なんて作る気はこの時も今もないため、苦笑いするしかなかったけれども。
「おおー! 心崎! ひさしぶりやな! えっと、その子が例の彼女なん?」
「おう、そうそう。えっと、そのセミロングの子、名前なんていうかな? 俺、心崎輝。よろしく」
「飯島結菜です。よろしくね! そっかぁ……。この人が不知くんの友達の……心崎くんかぁ」
「よろしく、飯島。それにしても、蒼にもやっと女友達出来たのか。よかったな、命」
輝は長瀬の肩をぽんと叩いたが、それを彼女は振りほどいた。
「……やめて。ヒカル、外ではボディタッチ禁止。アオイちゃん、ひさしぶり。元気だった」
長瀬は少しカタコト混じりの日本語で話す。
彼女は、これが素なのだ。
そして、語尾が上がっていないため、「僕が元気」だということを言っているだけと捉えられるが、彼女は長年の付き合いだから僕は分かる。
彼女は、僕に聞いているのだ。
「元気だよ。そっちは……問題無さそうだね」
「そう。ヒカルがべたべたくっついてきてウザい」
「いやいや、彼氏にうざいってそこどうやねん‼」
坂本さんのツッコミが笑いをもたらした。
そこへ、店員さんが次お待ちのお客様と声をかけたので、一度僕らは購入するために、レジに向かった。
輝と長瀬は席をとってくれている。
昔から、彼らは気が利く。
「不知、あんたスタバ行ったことある?」
くるりと回れ右をして、坂本さんは僕に尋ねた。
「ない。オススメってある?」
え? なんでそんなに露骨に顔をしかめるの? そんなまずいことなの?
「うーん、無難なものの方がいいよなぁ……。抹茶飲めるん?」
「飲めるよ」
「んじゃ、抹茶フラペチーノだねっ! あれ私も好きだよっ」
飯島さんは、いつの間にか頼んでいた抹茶フラペチーノとやらをふたつ手にしていた。
生クリームが、のっかっていて見るからに甘そうだ。
飯島さんからそれを受け取り、輝たちが取っていた席に移動し、いざ、ひとくち。
「不知くん、どう? 美味しい?」
飯島さんから、期待のまなざしがかかる。
彼女の目がワクワクと言っているように見える。
ひとくち飲むと、抹茶の甘味が口のなかに溢れる。
クリームは甘ったるくなく、それでいて優しい甘さが抹茶の甘さとマッチしている。
「おいしい……」
世の中にこんな美味しい飲み物があったのか、なんで今まで飲んでいなかったのかと思うくらいだ。
そうつぶやくと、飯島さんはしてやったりと言わんばかりに笑っていた。
「心崎、彼女の名前なんていうん?」
「あぁ、この子は長瀬命。マジで可愛いからよ」
「よろしく」
長瀬はぺこりとおじぎをする。
相変わらずの塩対応だが、彼女がこうなったのには、ある過去があるからだ。
昔も、飯島さんほど明るい性格ではなかったものの、かなりクールな性格だから異性から好意を寄せられることがあった。
だが、同性の関係は、良好とは言えなかった。
その態度が癪に触ったらしく、同性より異性の僕といる事が多かった。
小学校高学年になると、僕と長瀬は付き合っているだの、恋愛関連でいじられるようになる。
そのいじりの中心人物だったのが、輝だった。
この時は、輝に対しては敵対というか関わらないようにしていた。
輝は、このときのことを振り返って、テングになっていたと話した。
では、僕らをいじっていた輝となにがあって関わりを持つようになったか。
それは、ある日、輝が校庭の花壇をうっかり踏んでしまったときのことである。
そのせいで、彼はそのことをばかにされるようになる。
男の子のリーダー格であった輝はたったひとつのミスによって、その地位から落ちてしまったのである。
その日から、僕らのいじりはなくなったが、輝が次にいじられるようになった。
ある日の体育の時間で、三人一組をつくるようにいわれた。
皆集まってグループを作っていく中、僕は忘れられ、長瀬は無視されて、輝は煙たがられて、そうしてこの出来上がったのが僕らの三人グループである。
最初、輝はしぶしぶ僕らと関わっていたが、さすがは元リーダーである。
次第に、このグループのまとめ役になっていた。
それだけでは終わらなかった。
中学に入学した頃、輝は長瀬に告白した。
そのときも長瀬は無表情だったが、いつもと違っていたのは口角があがっていたという事らしい。
それからは、恋人としての彼らを見てきた。
手を繋いだり、抱き合ったり。
長瀬は口では、嫌がっているものの、口元がゆるんでいるのを見ると、やはり嬉しいのだろう。
一度、長瀬に輝の告白をなぜOKしたのか聞いたことがある。
彼女は、無表情のまま、
「なんとなく」
と答え、
「アオイちゃんも、早く彼女つくったほうがいい」
と余計なことまで言われた。
別に彼女なんて作る気はこの時も今もないため、苦笑いするしかなかったけれども。