ペンギンのような君に恋をしてしまった僕

 先程の休憩をしてから約一時間ほど経過しただろうか。

 僕らの集中力は完全に切れた。

 僕は小説を読んで、飯島さんはスマートフォンを片手に忙しそうに触っている。

「今、何時?」

「19時だよっ。不知くん、門限とかある?」

「ないと思う。基本的に外に出掛けにいかないから親とも門限とか決めていない」

「でも、そろそろ終わりにしよっか。もうすぐ晩ご飯だし」

「なんでじゃあさっきたこ焼きふたつ目食べていたの? 晩ご飯食べれないんじゃない?」

「たこ焼きは別腹なの!」

 まじかと思った。

 飯島さんはかなり食べる方なのか。

 せっせと飯島さんは筆記用具を片付けて、帰る準備をして、エスカレーターを乗ろうとしている。

 早い。待ってほしい。

「不知くんはさ、私が……」

 飯島さんはなにかを言いたげな顔をして、僕の方を見た。

 セミロングの髪が儚くフワリと揺れる。

 その表情はどこか寂しげで、放っておけば消えてしまいそうな感じがした。

「ううん。やっぱりなんでもない。気にしないで」

「うん」

 ここで言われることを想像してみたのだけど、学力に関する事なのかなと僕は思った。

 彼女は、かなり僕に教えていたけど、テストになったら実力を発揮できないとかそんな事を考えていた。

「飯島さん、行くよ」

 彼女は、手すりに手を置いて俯いた状態で固まる。

 なにか考えているのだろうか。

 それともただ聞こえていないだけだろうか。

「飯島さん?」

 再び声をかけると彼女はハッとして、こちらを向く。

「……あぁ。不知君。ごめん。ボーッとしてた」

 エヘヘとはにかむ飯島さん。

 何か変だなと思った。

 キャラを作っているような感じがしていつもの飯島さんじゃないような気がした。

 少し違和感があったが、それは気のせいなのだろう。

「さ、帰ろう」

 僕は、連れていかれるがまま、飯島さんについていき、そして、自宅に帰った。

 お風呂に入りながらふと思った。

 今日は楽しかったなと。

 そして、先程感じていた違和感はもうどこかに消え去っていた。

 お風呂からあがって、いつも通り小説を読むつもりだったけど、僕は机に向かって英単語の暗記練習をしていた。

『寝る前の記憶は残りやすいから暗記ものに使った方がいいよ』と言っていた飯島さんの言葉を思い出したからだ。

 彼女によって、僕は確実に変えられているのだろう。

 それはとてもありがたいし、僕にとってもプラスな事だ。

 飯島さんのおかげで高得点を取れそうな気がする。

 心の中で飯島さんに感謝しながら、眠りについた。