努めてテンションを上げながら言い募るも、彼の表情は改善されなかった。


「ルールが分からない」

「えっと、じゃあババ抜きでもいいですけど! それか他のカードゲームとか……」

「華」


 低まった声に、意図せず肩が跳ねた。彼は私を見据えると、静かに窘める。


「早く寝るぞ」


 ……何だ、それ。

 そっちがずっと部屋に籠りきりで勉強ばかりしてるから、親切心で言ってあげたんじゃない。別に私だってトランプではしゃぐ年じゃないし。何か私が我儘言ったみたいになってるし。


「そうですか。分かりました」


 僅かに残っていた味噌汁を飲み干して、立ち上がる。
 手早く自分の分の食器を下げれば、彼の焦ったような声色が背後から追いかけてきた。


「華、」

「食べ終わったら適当にここら辺置いといて下さい。後で洗うので」


 一方的に告げて自分の部屋に逃げ込む。
 勢い良くドアを閉めて、そのままベッドへダイブした。