しかし、こうしてまじまじと見てみると、本当に彼は端正な顔立ちをしている。
私は至って冷静に続きを述べた。
「先輩に恋人がいたら、私と同居してるだなんて、その人に悪いじゃないですか」
彼が自分のことは内密にしておきたそうだったから、今まで聞かないであげていたのに。まあ恋人がいたら私との同居は了承しないだろう、とたかを括っていた部分もあったけれど。
私の言葉を聞いて明らかに肩の力を抜いた彼に、わざとらしく詰め寄る。
「まさかですけど先輩、私が先輩のこと好きかも~とか、思いました?」
「華。この近くに人気のパンケーキ店があるらしいぞ」
「さては図星ですね」
はたから見れば、カップルなのかもしれない。でも私たちはそんな単純な関係ではなかった。
先輩は私が買い物に行く時、荷物持ちだと言っていつもついてくる。今も車道側を歩いてくれていて、私はそれに気付かないふりをしていた。
このままの穏やかな空気を、生活を、崩したくない。それはきっと、私以上に彼が願っているような気がしたのだ。