しかしジャイアンなのは口先だったようで、私が青色のトップスをレジに持って行くと、彼は黙って傍観に徹していた。


「貸せ」


 レディースファッションの店を出て、数歩進んだ時。
 手に持っていた袋を突然かっさらわれる。隣を見上げれば、「何だ」と彼が眉をひそめた。


「え、あの……先輩って、そういう趣味」

「馬鹿か。荷物持ちだって言ったろ」


 やけに私の買う服に口を出してくるから、自分も着たいのかと思ってしまった。

 それにしても、これくらいは自分で持てるのに。まあ貰える親切は貰っておこう。


「そういえば、先輩ってタカナシ先輩と付き合ってるんですよね?」

「待て待て待て。どうしてそうなった」


 身振り手振り、彼が私の言葉を押しとどめるようにして凄む。

 どうしてもこうしても。自分で言っていたではないか。
 タカナシ先輩だって私のことをライバル視していたし、そういうことなんだとしか思えない。


「私は偏見ないですけど、やっぱり日本では窮屈ですよね。将来二人で海外とか考えてるんですか?」

「華。人の話はまず聞くもんだぞ」

「先輩に諭される日が来るとは。不覚」