いつ。誰が。そしてその自信は一体どこから湧いて出てくるのか。甚だ疑問だ。
「……ちょっと、」
今の今まで黙って静観していたタカナシ先輩が、唐突に口を開く。
「正妻の俺を差し置いて話進めないでくれる」
「ああ、悪い。お前を蔑ろにしていたわけじゃないんだ」
ちょっと待って、正妻って何。
悪ノリしてるだけ? それとも真面目に言ってる? 二人が真剣な顔つきで会話するものだから、ますます分からない。
呆れ返っていると、チョコがおもむろに身を寄せてきた。そして私に耳打ちし始める。
「側室なのに、愛されてますなあ」
「は?」
「華が入部するってタカナシ先輩に伝えに行ったの、五時間目の後の休み時間なのに。放課後には自分も入部するって、まあまあまあ」
鈴木先輩とタカナシ先輩は同じクラスらしい。
だとしても鈴木先輩の行動力には驚かされるけれど、私のために入っただとか、そんなわけではないと思う。
「山田さん」
「は、はい」
タカナシ先輩にいきなり名指しされ、心臓が跳ねた。
どもりつつも返事をすると、彼はあくまでも真剣な顔で告げる。
「正妻の座は譲らないから」
「もう帰っていいですか?」
入部したことを若干後悔し始めたけれど、後の祭りだろう。
真面目な顔で不真面目な議論を交わす周囲を見渡し、早くも先行きを案じた。