明らかに取ってつけたようなテンションだった。

 ぶんぶんと首を振って、私は顔を上げる。


「そんなことない。……そんなに真剣になれるものがあるって、すごいと思う」


 私の好きなもの、打ち込めるものって、何だろう。
 分からない。中学生の頃は部活に入っていなかったし、高校生になってからも入るつもりはなかった。

 家に早く帰って、温かいご飯を作って、母の帰宅を待つこと。
 それが今までの私の全てで、幸せだった。それ以上は何も望まなかった。


「入ってみる?」


 チョコが僅かに口角を上げて誘う。冷やかしでも、冗談でもなかった。


「でも、私……チョコみたいにできないし、」

「やだぁ、私と張り合おうだなんて! 別に興味があるんなら止めないよって話!」


 興味。興味は、ある。
 特別これにだけ惹かれているわけじゃないかもしれないし、物凄く好きというわけでもないけれど。

 それに、何よりも。


「チョコと、一緒にやってみたいからっていうのは……だめ、かな」


 私もみんなみたいに、友達と時間を共有したい。


「だめじゃないよ」


 彼女が目尻を下げた。
 その瞳には、すっかり穏やかな色が浮かんでいる。


「よろしく、華」


 私を呼んで微笑んだ彼女は、随分と大人びて見えた。