果てしなく無感情に近い応答だったけれど、納得はしてもらえたらしい。
 群衆は「やれやれ」といった様子で散り始め、私とチョコの二人、そして過激派の集団が取り残された。


「……山田、華さん」

「はい」


 先週、私の肩を引っ掴んで声を荒らげた女子生徒である。
 彼女は緩慢に歩み寄ってくると、険しい表情そのままに、私へ手を差し出した。


「この間はごめんなさい。ちょっと……取り乱してしまって」


 ちょっと、どころではなかった気がするけれど。
 まあそれを口に出して空気を壊すのも無粋なので、黙って聞き入れることにする。

 恐らく和解の握手だろう。彼女の手を取ろうとした時。


「バストサイズもAカップって決めつけてごめんなさい!」

「声がでかいわ声が――――――!」


 慌てて食い気味に叫んでかき消す。せっかく握ろうと思った手も、つい振り払ってしまった。

 散り散りになった人たちが私の叫び声を聞いて、再びざわつく。
 こほん、と小芝居をきかせて咳ばらいを一つ。私は気を取り直して、目の前の相手と握手を交わした。


「はぁい。お二人さん、こっち向いてくださーい」


 途端、チョコが呼びかけてくる。
 かしゃ、とシャッター音が響き、首脳会談のようなポーズで固まった私たちに、彼女はブイサインを向けて晴れやかに笑った。


「これで円満解決、国交回復! チョコちゃんのお手柄ってわけね!」