ああ、もう。カオスだ。
 噛みつく勢いで怒声を飛ばすのは、この間廊下で私に絡んできた女子生徒たち。

 鈴木先輩の婚約者、否、恋人はなんと、タカナシ先輩のことだった。
 端の方に小さめのサイズで、男子高校生二人が仲睦まじく顔を突き合わせている写真が添えられている。


『二人はね、それはもう固い絆で結ばれていて……! 悲恋かもしれないけど、みんな温かく見守ってるの……』


 どこがだ。あの時の同情を返せ。
 全校規模で茶番を繰り広げられては困る。いや、男性同士で愛を築くことに関しては私は何も口出しはしないけれど。


「浮気相手の山田華さぁん、今のお気持ちは?」


 チョコがわざとらしく声を張り上げて私の脇をつついてくる。
 彼女の声に反応した周囲がこちらを振り向いた。その中にはいわゆる、鈴木先輩とタカナシ先輩過激派の彼女たちもいるわけで。

 どうしてわざわざ注目を集めるようなことをしたのか。恨みのこもった視線をチョコに向けるも、彼女はさながら会見に臨む新聞記者だった。
 私はため息をつきたいのをぐっと堪え、渋々口を開く。


「……二人がただならぬ関係だっていうのはよく分かりました」

「それでは、鈴木先輩のことは諦めるということですか!?」

「ソウデスネ」