思わず首を捻る。
 ポテトチップス、チョコチップクッキー。入れた覚えのない菓子類が、やや控えめに鎮座していた。

 ふと顔を上げると、レジの向こうにいた彼と視線がかち合う。そろりと私から目を逸らした相手の様子に、確信した。……いつの間に入れたんだ、ガキか。

 戻そうにも順番が来てしまったし、これくらいの浪費なら別にいいか、と思い直してレジを通過する。

 袋詰めをしている最中も、スーパーを出てマンションに向かう最中も、彼はそわそわしていたけれど、私はあえて何も言わなかった。

 そんな私に、どこか怯えているような気配すら隣から感じる。
 こっちは彼のせいで迷惑を被っているのだから、とちょっとした腹いせのつもりだった。せいぜい震えていればいいと思う。

 ちょっと面白かったので試しに食事中も黙っていたら、いつもは野菜に対して小言を垂れる彼も、文句一つ言わず完食していた。


「先輩、ちょっと左寄って下さい」