「だから、先輩のせいで色々大変なんですけど――って、聞いてます?」


 隣を歩く彼に、そう問いただす。


「ああ、聞いてる」

「聞いてませんよね」


 先程から彼の視線は、商品の陳列棚に釘付けだ。
 私は仕方なくこの話の続行を諦めて、ため息をついた。

 学校帰りのスーパー。彼と二人で寄ることになったのは、何も示し合わせたからではない。
 登校こそ一緒にならざるを得ない私たちだけれど、下校は違った。帰る場所が同じだといっても、別段お互いを待つことなく好き勝手に電車に乗っている。

 奇妙な新聞部のアジトへ連行された私は、何とか逃げおおして予定通り買い物へ。そこに突然、鈴木先輩が現れた。同じ電車に乗っていたらしい。


「あとは……先輩、何か買うものあります?」


 かごに入れた食材を確認しつつ、そう問いかける。
 しかし、返事はなかった。


「あれ?」


 ついさっきまで隣にいたというのに、ちょっと目を離した隙にこれだ。小さい子を持つお母さんの気持ちを、こんなところで理解することになるとは。

 男子高校生を真面目に探しに行くのも何だか癪なので、そのままレジへ向かうことにした。

 この時間帯のスーパーはやはり混雑している。列を作る主婦に交じって並び、レジカウンターにかごを乗せた時だった。


「ん?」