私の問いに、彼女は顔を上げる。緩く首を振ってから、「いるよ」と口を開いた。
「部長が一人いる。二年生なんだけどね」
「じゃあ、その人と佐藤さん……ええと、チョコだけなの?」
慣れない呼び名をわざわざ訂正すると、彼女はあからさまに表情を和らげる。余程このあだ名が気に入っているんだろうか。
「そう。まあ今年の入部人数次第で、廃部になるかもって言われたんだけどね~」
ふうん、と相槌を打って、私は視線を落とした。
今のところ新入生で新聞部に所属しているのは彼女だけで、故に校内新聞の記事も彼女に任されているのだとか。随分と放任主義な部長だ。
「ま、そういうわけだから、私はこの大スクープを取りこぼすわけにはいかないのよ。うまくいけば新聞部相続にもつながるしね」
「はあ」
「今後も記事完成までインタビュー続けるつもりだから、よろしく!」
鮮やかにウインク。
彼女のファンサービスを無言で受け流していると、その後ろでドアが開いた。
「……誰?」
私の顔を凝視して端的に問うたのは、背の高い男子生徒だった。その首が傾げられたと同時、彼の黒髪が揺れる。
「あ、タカナシ先輩! 遅いですよ、どこ行ってたんですか~!」