「昨日の夜は何を食べたんですか~?」
「え? グラタンと、しめじのバターソテーに……」
「ふむふむ。今日のお弁当のおかずは?」
「……あの、これ、意味あるの?」
佐藤さんに連れられてやって来たのは、新聞部の部室だった。
あの状況から抜け出せたことに関しては感謝するけれど、なぜか彼女の質問攻撃が始まり、先程から献立を詳細に答えている。
「何言ってるの! 記事を書くには入念な情報収集が必要なのよ!」
「何の記事なの、一体……」
「そりゃあもう」
不敵に笑った彼女に、嫌な予感が背筋を伝った。そしてそれは的中することになる。
「鈴木先輩の熱愛報道についてでしょ」
「浮気ではなく?」
「おっ、浮気を認めるんですね!?」
もうどうにでもなれ、といった胸中で宙を見やる。
心底ばかばかしい。というか、ほとんど先輩のせいなのでは?
何やら熱心にメモ帳に書き込む彼女を横目に、私は部室を見回した。
少し埃っぽいけれど、一応物自体は全て棚に収まっている。整頓されている、というよりかは、押し込められている、といった方がしっくりきた。
「他の人は、いないの?」