失礼にも程がある。童顔低身長、までは昨日も言われたから許すとして、最後は聞き捨てならない。
何ゆえに廊下の真ん中でバストサイズと声高らかに叫ばなければならないのか。いや、それに至っては私の非だった。
「一太くんはね、心に決めた人がいるのよ! あなたじゃ切り裂けない、強い強い絆が二人の間にはあるの!」
がくがくと肩を揺さぶられる。
必死に諭してくる女子生徒は、いかにも気の強そうな顔立ち――ではなく、むしろその逆であった。長い前髪で見えづらそうな細目に、恐々と開かれる唇。
後ろに控える数人の女子生徒もまた、とびきり目立つ容姿ではない。化粧っ気のない、真面目そうな集団だった。
「はーい、ストップストップ!」
不意に後ろから腕を引かれる。聞き覚えのある声が、確認する間もなく続きの文言を発した。
「抜け駆けは駄目ですよーぅ。このビッグニュースは私が最初に嗅ぎつけたんですからねっ!」
茶目っ気たっぷりに牽制した彼女は、そのまま私の手を引いて走り出す。
「えっ、ちょ、佐藤さん……!?」
「ノンノン。私の愛称はチョコ! リピートアフターミー、チョコ! セイ!」
「ちょこ? ああ、千代子……」
そうして私は、彼女に引き摺られるがまま廊下を進んでいくことになったのだった。