耳障りなことこの上ない。
 窘めた私に、彼も負けじと顔をしかめる。


「華、いいか。地球では今、森林破壊が進んでいる。このままいけば人類は滅亡してしまうかもしれない」

「はあ。まあ環境問題は深刻ですね」

「そうだろう。俺はな、わざわざ森林伐採をしてまでグラタンに入れる必要はないと思う」

「ブロッコリーって野菜なんですけど、知ってます?」


 昨日サラダにブロッコリーを添えたところ、「草食動物たちの貴重な食料を俺が摘むわけにはいかない」などと意味不明な供述をした犯人が彼だ。
 まず食感が気に食わない、と言っていたので、にんじんと一緒に細かく刻んでグラタンに入れてみたのだけれど。お気に召さなかったらしい。


「そんなことよりもですね」

「そんなこと……? 華、お前、今しがた自分で深刻だと言った環境問題を据え置いて他の話をしようっていうのか?」

「一分ほど黙って頂けると幸いです」


 彼に付き合っていると脱線にしかならない。
 私はまともに取り合うのをやめて、本題に戻ることにした。


「無理ってどうしてですか? 私たち学年違いますし、誤魔化そうと思えばいくらでも、」

「いや、もう言った」

「は、」

「別に隠す必要もないと思ってな。俺のマンションで一緒に暮らしてるって、説明しておいたぞ」

「はあ――――――!?」