「――というわけなので、私と先輩が同居していることは絶対に内密でお願いします」


 帰宅後、彼と食卓を囲んでいる最中。
 私は今日佐藤さんから聞いた話をもとに、結論としてそう述べた。

 彼が校内では才色兼備の有名人であること。仲睦まじい恋人――否、婚約者がいたこと。
 これが今日、初めて耳にした彼についての情報だ。

 クラスメートから視線を感じながらも馴染めずにいたのは、どうやら噂の影響らしい。彼と彼の婚約者との関係を邪魔した厄介者として、私は白い目で見られていたんだろう。全く、入学早々とんだ災難である。


「それは無理な頼みだな」


 野菜たっぷりのグラタンをスプーンでかき分けながら、彼がぼやく。


「華。にんじん入れたのか? あー……無法地帯だな、これは」

「食べ物にそんな物騒な言葉使わないで下さい」

「ああッ!」


 突然、彼が大声を上げたかと思えば、手を震わせながら激高し出した。


「何だこれは! どうしてグラタンにブロッコリー……お前がいるんだ! お前の居場所はそこじゃない、森に帰れ!」

「一回くらい黙って食べられないんですか」