どうして私が弁明紛いのことをしなければならないのか、甚だ疑問だ。
 若干の不満を抱えながらも私がそう主張すると、彼女は首を振る。


「彼女じゃないわ」

「は?」

「二人はね、それはもう固い絆で結ばれていて……! 悲恋かもしれないけど、みんな温かく見守ってるの……」


 彼女じゃない。ということは、まさか婚約者? この歳で? このご時世で?
 ちょっと話の全体像が見えてこない。いやそれよりも、婚約者がいるのに彼は私と暮らしているって、そっちの方がまずいのでは?

 一人ぐるぐると考え込む私に、自身の胸を押さえた彼女が目尻を拭う。


「まさにロミオとジュリエットね……嗚呼、神様はなんて残酷なの……」


 それ、バッドエンドだけどいいのか。もう勝手によろしくやってて欲しい。

 両手を組んで涙ぐみ、宙を眺める彼女を横目に、私は肩を竦めて食事を再開した。