私が問いかけた途端、彼女は目を点にして「どうして?」と首を傾げた。
「え、だって……普通、どうでもいい人のことそんなに観察しないでしょ」
顔も名前も一致しないような人が手を繋いでいようと、何していようと、別にどうでもいいと思うけれど。少なくとも私はそう思う。
だから彼女は鈴木さんの知り合いか、それとも以前関わりがあって彼に好意を持っているのか。そんなところなんじゃないかと見当をつけるのは、何らおかしくないはずだ。
「うーん……観察、というか……いや、人間観察は大好きだけど……」
言いつつ彼女が宙を眺める。
「これに関しては、噂だから。観察しなくたって自然と耳に入ってきたっていうか」
「噂って……本当に言ってるの? 佐藤さんのでたらめじゃなくて?」
思わず私が突っ込むと、「酷いなあ」と彼女は気を悪くした風でもなく笑った。
「言ったじゃない、校内で持ち切りだって。あの鈴木先輩と新入生の女の子が二人で登校してきたって、みんな騒いでるよ」
「ええ……」
どれだけ色恋沙汰に飢えているんだ、この学校は。
眉をひそめながら、待てよ、と彼女の言葉を脳内で反芻する。
「……あの鈴木先輩って、どういうこと?」