わざわざ他クラスから赴いてくるくらいだ。
 同じクラスだったら「ちょっと話そうよ」と肩をたたかれても違和感なく受け応えるけれど、彼女はそうでもなさそう。

 そして悲しいことに、私は入学してから二週間ほど経った今なお、昼休みを共に過ごす友達がいなかった。
 だから、誰誰ちゃんの顔見知りだとか、そんな風に話しかけてきたわけでもないはず。


「ズバリ、お聞きします」


 身を乗り出して机に手をついた彼女が、勢い込んで言う。


「鈴木一太先輩とはどういう関係なんでしょうか!?」

「…………は?」


 想像の斜め上。の、更に上、くらい。
 完全に意表を突かれて、私は頭のてっぺんから出したような声が漏れた。

 しかし彼女はといえば、ますます力を込めて語り出す。


「毎朝二人で一緒に登校してくる、とのことで校内では今その噂で持ち切りなんです! 新聞部としては、この真相を明らかにしないわけにはいかなくてですね!」


 興奮冷めやらぬ、といった様子で自身の拳を握る彼女に、私は完全に呆れ返ってしまった。
 新聞部だか何だか知らないけれど、そんなことでいちいち盛り上がれるなんて、随分お暇なことだ。


「で、どうなんです? お二人は禁断の関係なんですか?」