「黒髪ミディアム、童顔低身長……うん、間違いない! あなたが噂の山田華さんね!?」


 昼休みが始まって数分、その声は頭上から降ってきた。
 自分の席でお弁当箱の蓋を開けたまさにその時。唐突に名前を呼ばれて、私は顔を上げる。

 真正面で仁王立ちしているお下げの女子生徒は、私をしげしげと見つめて頷いた。


「さっすが私。狙った獲物は逃がさないのよ」


 と、自身に納得している様子の彼女に、残念ながら見覚えはない。
 少なくとも同じクラスではないし、周囲も彼女を訝しげに窺っていることから、脳内で「要注意人物」のレッテルを張らざるを得なかった。


「……あの、すみません。どちら様ですか」


 シンプルに食事を邪魔されたという事実も相まって、不愛想になってしまう。
 渋々箸を置いて問いかけた私に、彼女は赤茶色の眼鏡フレームを得意げに押し上げた。


「よくぞ聞いてくれました! 一年三組佐藤(さとう)千代子(ちよこ)! 新聞部期待の新入生です、よろしく!」

「はあ」


 自己紹介は大変有難いのだけども、初対面でいきなり「童顔」と指さされた私怨がある。よろしくしたくないのが本音だった。


「えっと……それで、私に何か?」