身振り手振り、全力で否定しにかかる。


「私は、母の知り合いのお家にお世話になるということで、ここに来たんです」


 そう。だからてっきり、母と同世代の女の人がいるものだと勝手に思っていた。
 目の前の彼はその人の子供なんだろうな、と自然に考えてしまう程には、先入観に囚われていたのだ。


「おう。だから、」


 彼が自身の顔を指さす。


「その『知り合い』っていうのが、俺」


 ちょっと、本当に、色々待って欲しい。

 そもそもこの人は誰なんだ。どういう繋がり方をすれば、私と同い年の男子と母が「知り合い」になるのだろう。
 まあそこは百歩譲っていいとしても――


「……本当にここ、あなた以外いないんですか?」

「何回言わせんだよ。だからそうだっつってんだろ」


 少々呆れたように息を吐いた彼に、私は椅子から立ち上がる。


「帰ります」

「待て待て待て、待てって」


 傍らに置いてあったボストンバッグを持ち上げ、足早に数歩進んだところで、後ろからパーカーのフードを掴まれた。


「変態! 不審者! 離さないと通報しますよ!」

「分かったから落ち着けって」

「誰のせいですか!」