私からもそう切り出すと、彼女は「まあ、そうだったの」と口元を手で押さえる。
「はい。半年間なので、秋にはまた戻るんですけど……お隣、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。今度煮物でも良かったら作って持って行くわ」
「ほ、本当ですか……! 助かります、ありがとうございます!」
色白の彼女は、私の返答に品の良い笑みをたたえて頷いた。
そして細めていた目をゆっくり開くと、こちらを見据えて問いかけてくる。
「ということは、今は二人で住んでいるってことになるのかしら?」
「え? ああ、はい……」
「そう……」
何か意味ありげに目を伏せた彼女に、気持ちがざわついた。
『最近お父さん見かけないけど……元気?』
きっとそこに起因している。それは分かっていた。
だけれど私は聞くわけにいかなくて、なぜかというと、彼が頑なに自身のことを話したがらないからだ。
「あの子ね、前まではお父さんと住んでたんだけど……」
彼女がぽつりと呟く。
その瞳には僅かに、好奇心が宿っていた。人の噂をするときの、悪気のない色だ。
でも――
「ハナコ!」