「朝方まで毎日何してるんですか?」


 眠そうに目を瞬かせながらおにぎりを頬張る鈴木さんに、そう問いかけてみる。
 刹那、彼は唐突に声を上げた。


「これうまいな」

「良かったです。おにぎりが味濃いぶん他は薄めに作ってあるので、ちゃんと全部食べて下さいね」


 コンビニの濃い味付けに慣れ切った彼の舌は、焼きおにぎりをお気に召したらしい。
 黙々と口に詰め込む様子がリスのように思えて、少し微笑ましかった。

 何だかまた話が噛み合っていない。というより、話をそらされている気がする。


「……鈴木さんが何やってるかはどうでもいいんですけど、」

「地球の調査報告を火星に送信していてな。これが結構時間がかかるんだ」

「でもそれ、絶対にその時間にやらなきゃいけないんですか?」


 動じない、突っ込まない。真面目に取り合っていたら日が暮れる。
 私の質問に、彼は若干不服そうに黙り込んだ。


「早い時間に始めて、夜はしっかり寝ませんか。早起きは気持ちいいですよ」

「俺は昼の穏やかな空気が好きだ」

「じゃあ私は朝一人で食事をとることになるんですね。分かりました」