指さされた二リットルの大容量水筒を見て、思わずまともに取り合ってしまった。
大人しく五百ミリリットルのものを買い物かごに放り込んだところで、ふと気が付いて声を上げる。
「鈴木さんは、何か買わなくていいんですか?」
「弁当箱か?」
「いや、それに限らずとも」
「そうだな……華が毎朝弁当を作ってくれるというなら俺も弁当箱を買おうと思うんだが……」
会話が噛み合わない。
というか確かに、今頃思い至ったけれど、自分の分だけ作るというのも妙な話だ。どうせこの人は昼もコンビニ頼りだったに違いない。
「一人分も二人分も大して変わりませんし、いいですよ」
頷いて見上げると、虚を突かれたような表情で固まる彼と目が合った。
「何ですか」
「愛妻弁当……?」
「殴りますよ」
油断も隙もない。はあ、とわざとらしくため息をついてみせる。
それから私の要望通りキッチン用品もいくつか購入し、家路についた。
「今日はちょっと疲れたのでカレーにしようと思うんですけど、いいですか?」
「にんじんは入れないでもらえると有難い」
「みじん切りにするので大丈夫ですよ」