「鈴木さん、いいですって。それより私、調理器具の方を見たいんですけど」

「いや、あのままじゃ駄目だろ。遠慮すんなって」

「いいですよ、どうせ半年なんですから」


 やかましく言い合う午後二時、ホームセンターにて。

 買い物へ行こう、と言い出したのは意外にも彼の方だった。
 私の部屋が殺風景なのを見かねて、カーペットを替えるだの、カーテンを新調するだの、出費を厭わない様子だ。

 私といえば、そんなことより今日からでも使えるキッチン用品の方が重要である。


「昨日掃除はしましたし、替えなくても十分綺麗ですよ」

「じゃあ、そうだ。服とかはいいのか? それ以外に欲しいものとか――」

「服は持ってきたもので事足ります。そうですね、後は……あ、お弁当箱買ってもいいですか?」


 制服や鞄、小物。その他必要になりそうなものは、母が発つ前に一通り準備済みだ。
 彼の家には二人分どころか三人分の食器類があって、それについても購入の必要はなさそうだった。

 唯一思いついたものを述べると、彼は即座に首を縦に振る。


「ええと、すみません、水筒も買いたいです」

「ああ、買おう。これでいいか?」

「私いつからスポーツ選手になったんですっけ?」