彼のことだ。放っておいたら平気で食事を抜いてしまうだろう。仮にご飯を用意して置いておいても、子供のように野菜を避けて食べるかもしれない。
 見張るという意味も兼ねて、食事は一緒にとるべきだ。


「それから、あとは……思いついたらその都度、付け加えましょう」

「待った」


 話を結ぼうとしたところで、彼が口を挟む。
 その長い指を三本立て、穏やかな表情で提言した。


「三つ。帰ってきたら、『ただいま』と言うこと」


 一瞬、訳が分からなかった。
 目を見張る私に、彼はこう付け足す。


「今日からここは、俺と華の家だ」


 多分、人の機微が分からない人では、ないのだと思う。
 どこか窮屈だった私の心を開け放つように、彼は快活に述べた。


「ソファで寝っ転がってもいいし、料理しながら歌ってもいい。風呂上がりにパンツ一丁でうろついてもいいんだ」

「いや、最後のはどうかと思うんですが」

「気を遣って風呂場のドアに鍵かけなくても大丈夫だからな!」

「出てけ変態――――――!」


 前言撤回だ、全く。

 かくして私たちの不安要素満載の同居生活は、幕を開けた。