金銭面での懸念はひとまずなくなったということにしておいて。


「ルールを決めたいです。これから暮らす上で、絶対に守るルール」


 さほど重要性を感じていないのか、彼は曖昧に頷く。
 私は先程の彼のように人差し指をピッと立て、強気に口を開いた。


「一つ。お互いの部屋には立ち入らないこと」

「華、まさか……」

「何ですか」


 はっとした表情で息を呑んだ彼に、思わず眉根を寄せる。
 そして次の瞬間、彼は勢い良く立ち上がって大声を上げた。


「お前も火星人だったのか!?」

「鈴木さん、うるさいです」

「そうか……いや、隠さなくてもいいんだ。俺は分かってるから。向こうから持ってきた思い出の品を荷物に忍ばせてあるんだろう? 長い旅路だったな」

「すみません、この茶番いつまで続きます?」


 生憎、ボストンバッグの中には怪しげな隕石や食料は何一つ入っていない。
 適度に無視するのが吉だ、と学習しつつある私は、構わず続けた。


「二つ、食事は一緒にとること」