シンプルな木目調のダイニングテーブルを勧められ、素直に従った。
 キッチンへ向かった彼はといえば、「うわ、何もねえわ」と声を上げる。


「お前、エナジードリンク飲める?」


 奥の方からそんな質問が飛んできた。
 何もないって、まさか飲み物のことだったのか。それにしたってもうちょっとマシな提案があるだろう。


「本当に何もないんですね」

「うるせえ、客人が文句言うな」

「今日から私ここに住むんです」

「あー、そうだったな」


 不毛なやり取りを終え、結局彼は缶を二つ持ってこちらへやって来た。そのうちの一つを私に差し向けると、自らは既に開けてあった缶を勢いよく煽る。


「何か不味くね? ……あ、賞味期限過ぎてるわ」


 缶の底面を覗き込んでそう呟いた彼に、私はプルタブを開けるのをやめた。
 代わりに両手を膝の上で揃え、背筋を伸ばす。


「あの」

「どうした? 飲まねえの?」

「逆にどうして飲めるんですかこの状況で」


 さっきのは独り言のつもりだったのかもしれないけれど、私にはちゃんと聞こえていた。流石に初日からお腹を下すのは御免だ。

 そうじゃなくて、と前置いて、私は問いかける。


「ご家族の方は今お出かけですか?」