私のことについては、やはり母から情報を得ていたそうだ。
 名前を知っていたのも、私と彼が古くからの縁があったわけでも何でもなく、純粋に母から聞いたらしい。


「……あの、鈴木さんっておいくつなんですか」


 次はこっちが聞き出す番だ。
 結局のところ、彼について分かっている情報は今のところ名前だけ。これから一緒に暮らしていくには、謎が多すぎる。

 彼は緩慢に腕を組むと、小首を傾げた。


「いくつに見える?」

「めんどくさ……」

「何だ、何か聞こえたな」

「十七とかですか?」


 出会って間もないけれど、この人とまともにやり合ってはいけないことは既に体感済みだ。

 しれっと予想をぶつけた私に、彼は口角を上げる。


「惜しいな。正解は十六」

「えっ、私の一個上ですか?」

「いかにも。先輩は敬えよ」


 どうしよう、この世で一番敬いたくないかもしれない。

 しかし年齢を知ったことで彼への興味は俄然沸いた。自分と一つしか年が変わらないのに、こうも色々と違うものなのか。
 私は身を乗り出して質問を重ねる。


「いつから一人暮らししてるんですか?」

「そうだな。あれは確か百六十四年前、俺が地球へやって来た時――」

「鈴木さん十六歳なんですよね?」