玄関から入ってきてまず見えるのが、開かずの間と私の部屋。
廊下を真っ直ぐ突っ切れば、開けたリビングがお目見えする。その左手、リビングのすぐそばにあるもう一つの部屋が、彼のものだろうか。
「鈴木さんって、一人暮らしなんですよね?」
「ああ」
何を当たり前のことを、といった顔で見下ろしてくる彼に、ますます私の首の角度は曲がる。
「一人暮らしなのに……どうして、」
どうして、3LDKなのか。
疑問が脳内に浮かび上がった。それを口に出すのは何となく憚られて、中途半端に黙り込む。
普通に考えて、一人暮らしなら1Rや1K、せいぜい1LDKが妥当だろう。それなのに、彼が住んでいるのは3LDK。私が母と住んでいたアパートよりも新しいであろう、綺麗なマンション。
「いえ、何でもないです。お部屋ありがとうございます」
詮索は良くない、やめよう。色々事情があるのかもしれないし、仮にも赤の他人から「同居人」に成り上がったからといって、余計に首を突っ込むのは無粋だ。
「……実は、」
珍しく曇った表情。彼は私の呑み込んだ疑問に答えようとしてくれているのだろうか。
「や、いいですよ。無理して言わなくても」