ようやく本題の一歩手前に戻ってきたらしい。
食材を無駄にするのは私としても避けたいところだ。持って帰ると言っても聞かないだろうし、ここで使う、というのが建設的な答えなんだろう。
「華が来てくれて助かった。あのまま死んでいたかもしれない」
「縁起でもないこと言わないで下さい。……大体、倒れるまで食べないって馬鹿なんですか」
死、という単語を聞いて少し動揺した。
横たわる彼の体を見つけた時、本当に肝が冷えたのだ。
「どうも昔から癖が抜けなくてな。何かやり始めると、終わるまでそれ以外のことを放り出してしまう」
そう零した彼の声色が、ほんの少し弱々しい。
つくづく不思議で掴みどころのない人だ。ある意味で、誰か一人にここまで気を取られるのは初めてだった。
目を伏せた彼に掛ける適切な言葉が見つからず、私は背を向けて緩慢に歩き出した。
「華。頼む、待っ――」
「荷物取ってくるだけです」
後ろで彼が逡巡しているような気配を感じる。
「全部あっちに置いてきちゃったので。取りに戻って、また帰ってきます」
どっちみち、遅かれ早かれ。彼と暮らすことになるのは決定事項だ。それが母の望んだこと。
「流石に、死なれるのはまずいので」
今はただ、それだけの理由で割り切ろうと思う。