だから、あなたのせいでしょって。
 胸中で悪態をつきながら、臨戦態勢で玄関に足を踏み入れる。

 ここが三〇五号室じゃなければ救われたのだけども、彼の反応を見る限り、そんなことはなさそうだ。

 靴を脱いで揃えてから、再度「お邪魔します」と軽く頭を下げる。
 そんな私の声を背中で聞いていた彼が、振り返って首を傾げた。


「お邪魔しますって……今日からここで暮らすんだぞ、お前」

「そう、ですね」


 いやだからって、いきなり我が物顔でなんて入っていけない。礼儀正しく、きちんとするべきところはきちんとしたいのだ。


「荷物それだけか? 少ねぇな」


 フローリングの廊下。
 彼に黙ってついていっていると、キッチンを通り過ぎて、少し広めのリビングが現れた。大きい窓からたっぷりと光が射し込んでいる。


「はい、一応……最小限に抑えてきたので」


 頷いた私に、「そこら辺に置いとけ」と彼は端的に言い放った。そろそろ腕が限界だったので、有難くそうさせてもらう。


「まあとりあえず座れよ。疲れただろ」

「……ありがとうございます」