唐突に切り出された話題に、遠慮会釈なく声を上げた。
 そんな私の様子を気に留めることなく、彼は続ける。


「見ての通り、俺は家事ができない。料理も、掃除も、全くできない」

「はあ……」

「だから、お前が使ってくれないと、食材が無駄になる」


 何の話をし出したのかと思えば。彼は私が買ってきた食材のことを気にかけていたのか。
 自分から「一緒に暮らしてくれ」と頼んでおいて、話のすり替えもいいところだ。


「それは……まあ、分かりました。じゃあ私が持って帰ればいいですか?」


 そういうことだろう。別に土下座したまま話すことでもないと思うけれど。
 しかし私の提案に、彼は頷かなかった。


「ここで、使って欲しい」

「はい?」

「ここで、俺に料理を作ってくれないか」


 なるほどそう来たか、と唇を噛んだ。
 正直、さっきあれほど文句を言われて素直に了承するのは癪に障る。

 逸らした視線の先に、散らかったリビングの光景が映った。
 家事ができない。それは事実なのだろう。流石にこのレベルの汚部屋は、なかなか生成できるものではないと思うけれど。


「逆に聞きますけど、今まで食事はどうしてたんですか。まさか、三食全部コンビニじゃないですよね」