この期に及んで駄目出し!? 人がせっかく親切にしてあげたのに!?
そりゃあ味の好みは人それぞれかもしれないけど、わざわざ言わなくてもいいじゃない。それに、今は特別薄く作ったんですけど!
「あーはいはいすいませんでした、もう食べなくていいです!」
「ちょ、待て、まだ食ってる」
「うるさい! 人が作ったモンに文句言うなぁ――――!」
やんややんやと散々言い合って、それでも結局彼は出汁まで全て飲み干した。
「ごちそうさま」
「……お粗末様でした」
彼が再び手を合わせたのを横目で確認し、私は立ち上がる。
「じゃあ私、帰ります」
元々覚悟を決めて来たはずなのに、彼の態度に腹が立って白けてしまった。やっぱりこんな人と暮らすのは御免だ。
金銭面の問題もあるからそう長くは好き勝手できないけれど、あと数日は距離を置きたい。今は非常に苛々している。
「食材は全部冷蔵庫の中に入れておいたので、腐らせないうちにちゃんと使い切って下さい。では」
「華」
「……何ですか」
まだ何か文句をつけたいことがあるのだろうか。
露骨に嫌な顔を作って振り返ると、彼はソファから降り、床に膝をついているところだった。
「頼む。俺と暮らしてくれないか」