少し大きめの底の深い器に盛りつけて持って行くと、彼が鼻を動かす。
「全然大したものじゃないですけど……とりあえず、どうぞ」
倒れるくらいだ。随分と長い間空腹状態だったんだろう。急に食べても差し支えないように、なるべく胃に優しいものを作った。
「いただきます」
やっぱり、そこはちゃんとしている。
彼は両手を合わせてからスプーンを持って、ゆっくりと口に運んだ。
その目が微かに見開かれる。
「……お口に合わなかったです?」
一応料理は得意な方だと自負しているけれど、母以外に振舞ったことはほとんどない。今更ながら不安になった。
しかし彼は静かに首を振ると、気の抜けたような笑みを浮かべる。
「いや、……うまい。けど、」
「けど?」
何だろう。思わず身を乗り出して続きを待ってしまう。
「かなり薄くないか?」
「……は、」
「醤油持ってきてもらえるか。ちょっと味気ない」
「はあ――――――!?」