空気もどこか淀んでいる気がする。
とりあえずカーテンと窓を開けて換気をしよう、と視線を横に投げた時だった。
「――鈴木さん?」
物が溢れる床の上に横たわっている、細長い胴体。
ざ、と全身から血の気が引いて、そこに駆け寄った。
「鈴木さん、大丈夫ですか!? 鈴木さん!」
「……う、」
大声で呼びながら肩を叩くと、彼が苦しそうに呻く。
最悪の事態が頭によぎっていたため、呼吸をしていることに少しだけ安堵した。
「どうしたんですか? 何があったんですか? あ、とりあえず救急車……」
今度こそ、冗談でも何でもなく通報案件だ。それも被害者は彼。
僅かに震える手を叱咤し、スマホを操作する。そんな私の動きを止めるように、彼の手が伸びてきた。
「は、……った」
「え? 何ですか?」
断片的に聞こえたか細い声に、耳を傾ける。
「……腹、減った……」
「……………………はい?」
「腹減って、死、ぬ……」
うっ、と再び呻いた彼が、腹部を押さえて縮こまる。
その様子を見下ろしながら自分の中で何かがわき上がり、耐え切れなかった私は。
「紛らわしいわ馬鹿たれ――――――!」