小さいけれど華やかなチャペル。大きな窓からは青空が覗き、絶好の結婚式日和だ。
 先輩と二人で参列席にちんまりと座り、時を待つ。


「二人ともごめんね! お待たせ」


 後ろから母の快活な声が聞こえた。弾かれたように顔を上げ、振り返る。

 スーツ姿の尚也さんの隣。純白のウェディングドレスに身を包んだ母が、照れ臭そうに手を振った。


「お母さん、綺麗……」


 無意識に零れ落ちた独り言。それを耳にした母は、「やぁね」と笑って目を伏せた。

 だって、本当に、お世辞なんかじゃない。
 母は元々美人だけれど、いつもきっちりした服とメイクばかりだったから。こうして煌びやかに変身した彼女は、間違いなく世界一綺麗だと思った。


「あ……えっと、写真! 撮ってもいい? こうやって、二人が歩いてくところの……」

「はは。いいよ」


 勢い込んで立ち上がった私に、尚也さんが可笑しそうに頷く。

 今日の結婚式は、私たち四人だけで静かに執り行われることになっていた。両親は「再婚だから」と最初はやらないつもりだったけれど、私の強い希望で実現した。


「座ってるだけで退屈かもしれないけど、すぐ終わるから。終わったらご飯食べようね」