どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。

 数日ぶりにスーパーへやって来て、買い物を終えた後だった。買った食材を袋に詰めながら思案するのは、自分の財布の中身について。

 母と別れた日に渡されたのは、一万円札一枚。
 本来彼の家に行くまでの交通費があれば事足りたはずで、何かあったら困るから、とかなり多めに持たせてくれたのだ。

 つまりこのままでは、半年はおろか一か月ももたない。
 非常に現実的かつ生々しい理由だけれど、そろそろ潮時だ。

 きっとこのままアパートへ帰れば、またしばらく外出しないだろう。そう思った私は、意を決して駅へ向かった。


「はあ~……」


 そしてやっぱり、後悔している。
 電車から降りてマンションまで来たはいいものの、近付くにつれて憂鬱は増すばかりだ。

 勢いで来てしまったせいで、買い物袋は持っているのに荷物はないという不可思議な状況。

 前回と同様、階段を選択するなどというヘマはせず、エレベーターに乗って三階までやって来た。

 手前から五番目のドア。三〇五号室。
 ポケットに手を突っ込んで、目当てのものを探す。それを固く握り締めながら、恐々とインターホンを押した。