しん、と静まった空間。
彼女は虚を突かれたように目を見開いていて、恐らく俺もまともな顔をしていないだろう。
「ちょ――父さん、急に何言ってんだよ。いくら何でもそれは、」
「だって、一太は一人だと飯も食わないだろ。その点、華ちゃんがいれば心配ないしな」
いや、違う。そんなビジネスライクなことを言っているんじゃない。
小学生の「妹」ならまだしも、高校生、ましてやたった一つ違いの女の子と住むのはいかがなものか。
現に彼女だって物凄く困っている。俺のいる前だからはっきりとは言えないんだろうが、それがかえって申し訳ない。
「本気で言ってんのか? 仮にそうしたとして、俺らの相性が最悪だったらどうすんだよ」
オブラートに包んで、少し違う角度から問いただす。
しかし父は、俺の言葉に表情を和らげた。
「……そうしたら、元通りになるだけだ」
「え、」
「俺は一太と、彼女は華ちゃんと……また、暮らすだけだよ」
その言い方は――ずるいと、思う。
唇を噛んでぐるぐると思考を巡らせた。そんな俺の様子をみかねてか、彼女が口を挟む。
「一太くん、嫌なら無理しなくていいからね。私も、あの子がどういう風に感じるかは何とも言えないし……」