それを聞いた瞬間、まさか、と体が強張った。


『ねえ華。例えばよ。例えばの話……きょうだいが増えるとしたら、お兄ちゃん、お姉ちゃん、弟、妹、どれがいい?』


 いつだったか、もう明確には思い出せない。
 食卓で、不意に投げられた質問の記憶。私は確か、その時。


『え? きょうだい? いらないよ、一人が一番楽だもん』

『ええ~、そうなの? 本当?』

『ほんと。きょうだいとかいらない。一人がいい』


 自分なりの強がりだった。きょうだいが欲しいなんて認めてしまったら、一人でいるのが寂しくなるから。だって、願ったところで増えるものじゃない。
 でも、一番は。母へ、「私のことは気にしないで」と、伝えたいからだった。

 母と二人で十分幸せだから。寂しくなんてないよ。だから、心配しないで。
 そんな風に、伝えたいだけだった。


「華に話そうか、ずっと迷ってたの……でも、華にとって家族が増えることが負担なら、無理強いなんてしたくないから……」


 ただの結婚じゃない。お互い再婚。そして、娘と息子。
 きょうだいなんていらない。そう言った私の元に、先輩は現れた。


「一太くんと一緒に住んで、華が嫌なら……全部、やめようと思ってた。だって私たち、二人でも、楽しいもんね」