ここで主張しなければ負ける。
 年頃の男女を一緒に住まわせて、どうしてそんなに抵抗がないんだろう。アメリカでは普通だったりするんだろうか。いや、ここは日本なんだからグローバルな基準を持ち込まれても困る。


「まあそんなこと言わないで。仲良くしてくれたら嬉しいわ」

「いやいやいや、お母さん、私たった一人の娘だよ? 大事な一人娘だよ? 危機感って知ってる?」

「華が一人で暮らすより、一太くんといた方が安心だと思うけどねえ」


 駄目だ、全く私の意見が通りそうにない。
 確かに自分一人で暮らすのはなかなか危険だとは思う。思うけれど、彼と二人で暮らすのも危険だ。


「まさかとは思うけど、華」

「な、何?」

「いまアパートに帰ってきてたりしないわよね?」


 ぎく、と分かりやすく体が強張った。
 途端に黙り込んだ私に、母が「あのねえ」とため息交じりに叱る。


「今すぐ一太くんのところに戻りなさい。女の子が一人で暮らすなんて、本当に危ないのよ。何かあった後じゃ遅いんだから」

「わ――分かってるよ。でも、」

「でももだっても聞きません。いい? お母さんは華が心配なの。お願いだから、一太くんと一緒にいて」