もうとっくに、自分の中で答えは出ている。


「そんなの、今更聞かないで下さい。先輩はうるさいのがデフォルトですし、にんじんが食べられなくても他の野菜を食べればいいですし、」


 一人のご飯が寂しいのは、きっと先輩といる時の賑やかさが身に染みてしまったからだ。静かなリビングも、冷たい朝も。もう、一人になるのはこりごりだった。


「だって先輩、前に言いましたよね。私は一人じゃないって……一緒に暮らす以上、」

『俺とお前は家族で――』


 あの時、その先を遮ったのは、他でもない私だったけれど。


「私たちは、家族だって」


 綺麗じゃない。普通でもない。でこぼこで、ちぐはぐで、相性も決していいとは言えない私たち。

 でも、帰ってくる家はいつだって温かかった。それはどんな最新の器具でも敵わない、心の暖房。
 文句ばかり、小言ばかり。くだらないことで言い合って、喧嘩して、呆れて途方に暮れて。気付けばまた、二人で食卓を囲んだ。

 恋? 愛? 多分、全部違う。好きとか、嫌いとか、そんな品定めをするより先に、強引に顔を合わせる「家族」そのもの。


「私は先輩のことが好きじゃないけど、これからも一緒にいたいんです」