記憶の新しいツーショット写真が、脳裏に浮かぶ。
そうか――あれは、きっと先輩のお父さんだったんだ。仲睦まじい二人の笑顔が、ようやく腑に落ちた。
「研究室が同じだったそうだ。父さんはそのまま研究員として残って、華の母さんは企業に就職した。それで、……アメリカに行くことになったと、父さんに言われたんだ」
「え――」
「今年の春だ。華の母さんも、そうだったろ」
二人は同じ時期にアメリカへ飛び立つことになった、ということか。それじゃあ、先輩のお父さんも今、アメリカに?
「卒業してからも仲が良かったらしい。連絡を取って、お互いにアメリカ行きのことを話して――それで、」
華の母さんは、アメリカへ行くのをやめようとしていた。
彼は、そう、言った。
「華を日本に残して行くのが心残りだったんだろう。だから、本来は行かないはずだったんだ」
確かに、預け先には困ったと思う。母の両親は既に亡くなっていて、親戚は遠く離れた九州にいる。私が何事もなく高校へ通うには、母が日本にそのままとどまることが最適だ。
「俺の父さんも、実は渋っていた。まあこの通り、俺はすぐに死にかけるからな」