母と連絡が取れたのは翌日の昼のことだった。
 軽く部屋の掃除をしていると電話がかかってきて、私は慌ててスマホの画面をタップした。


「もしもし、お母さん?」

「華、ごめんね。昨日電話くれてたみたいだけど、出られなくて」


 ううん、と短く返してから、一日ぶりに聞いた母の声に少し安心する。

 昨日の夜、なかなか寝付けなくてアメリカについて色々調べていた。
 飛行機で十二時間、時差は十四時間。大きなビルと、夜でもまばゆく街を照らすネオン。まさに別世界だ。


「無事に着いたんだね、良かった」

「そうね。久しぶりの飛行機だったからちょっと疲れちゃった」


 向こうはもう夜らしい。さっきまで寝てたから眠くない、と母が笑った。


「そっちはどう? 大丈夫?」

「あ、」


 母の問いかけに、私はようやく本題を思い出す。
 電話越しだから姿は見えないのに、思わず拳を握って声を張った。


「そうだよ、それで昨日電話かけたの! ねえお母さん、あの人と知り合いって本当?」

「一太くんのこと? そうね、知り合いよ」

「何で男の人と二人で暮らさなきゃいけないの? おかしくない? おかしいよね?」