「華、大丈夫? 顔色悪いよ」


 チョコが言いつつ私の顔を覗き込んでくる。
 頷こうとして、やっぱりかなりしんどくて、力なく首を振った。


「保健室行こうよ。熱あるんじゃない?」

「分かんない、けど……早く帰って、寝たい」


 今日は夏休み前最後の登校日だった。

 昨日の夜からなんとなく体が怠いなと感じていたけれど、どうやら風邪を引いてしまったようだ。確かに数日前、シャワーを浴びてからソファでそのまま朝まで寝てしまったことを思い出した。

 保健室に行ったところで、結局最後は自力で帰らなければいけない。だったら最初から自分の部屋のベッドで横になりたかった。

 チョコは私の駄々を耳に入れると、「じゃあ私が家まで送ってくよ」と申し出る。


「なんか華、ふらふらしてるし。一人で帰すの危なっかしいから」

「いや、でも……」

「病人は黙って言うこと聞いてればよろしい!」


 彼女の覇気に押され、結局マンションまで付き添ってもらうことになった。
 チョコは私がベッドに潜り込むのを見届け、立ち上がる。


「華~、なんか食べたいものある? 買ってこようか?」

「ううん、いい……大丈夫……」