嘘つき。
私、今日帰ってきた時ちゃんと「ただいま」って言ったのに。めちゃくちゃ家の中静かだったんですけど。
『お前はもう、一人じゃない』
本当に、嘘つきだ。
適当に惰性で温めたご飯なんて、全然美味しくない。一人で食べるご飯なんて、全然つまらない。
咀嚼して飲み込もうとしたけれど、喉の奥から熱いものがせり上がってくる。
「先輩の、バカ」
もう、気まずくても何でもいいから、せめて出て行くことはしないで欲しかった。そんなことはいっても、私のせいだからどうしようもない。
俯いた先にあるタッパーのご飯の中に、水滴が落ちる。それを自覚すると、もう我慢できなかった。
堪らず箸を置いて、立ち上がる。ご飯は喉を通りそうにない。
シャワーを浴びて気分を変えようと、頭を振った。
寂しい、なんて、思いたくない。思う資格もない。
悔しかった。先輩はいい加減な生活を送っていて、私がいなきゃ死ぬかもしれないくせに、あっさり出て行くから。
私がいなきゃ駄目。全然、全く、そんなことなかった。
今だって、きっとこの先だって、先輩は私がいなくても平気で暮らしていけるんだ。
何それ。半ば怒りにも似た感情が、渦を巻く。
駄目なのは私の方じゃんか。平気じゃないのは、苦しいのは、私じゃんか。
冷たいシャワーで余計な思考を削ぎ落して、早々にあがってソファに寝っ転がる。
もういっそ、このまま朝が来なければいいと思った。