先輩がいなくなって、三日が経った。
 変わったことといえば、家事の時間が短くなったことだろうか。

 隣の伊集院さんは、毎日必ず一回は私の様子を見に来てくれる。昨日は肉じゃがを持ってきてくれた。

 学校から帰ってきてすぐにテレビの電源を入れ、リビングに立ち尽くす。なんとはなしに家の中を見回して、広いな、と思った。
 広い。この家は、こんなに広かっただろうか――いやきっと、一人分の体積が減ったからそう感じるのだ。

 まあでも、いざ一人になってみると、結構気楽だ。
 リビングで着替えたって平気だし、ご飯は自分しか食べないから適当でいいし、お風呂もシャワーで済ませれば掃除が楽だし。テレビを見て夜更かししても、ソファで寝てしまっても、誰も文句を言わない。

 その日もキッチンにちゃんと立つ気力がなくて、伊集院さんに分けてもらったおかずと、冷凍保存しておいたご飯をレンジで温めた。もそもそと黙って口に運びながら、テレビを眺める。


『じゃあ、もういらないな』

『……何で消すんですか』

『今は俺がいるんだから、必要ないだろ』


 必要なんですよ。だって先輩、普通にいなくなるじゃないですか。だから私、こうしてテレビ見てるんじゃないですか。


『お前はもう静かな家に帰ることはないし、テレビで気を紛らわす必要もない』