何だかんだ疲れていたようで、ベッドに横たわった途端、眠気に襲われた。
 目を開けば、カーテンから光が漏れている。時刻は七時を少し過ぎたところだ。

 せめて平日だったら間がもったかもしれないのに、生憎今日は日曜日である。寝ても覚めても気まずさは拭えるわけがなく、仕方なしに部屋を出ることにした。
 彼はまだ起きていないのだろうか。リビングに姿は見当たらなくて、ほっとした。

 起き上がっていつものように支度を終えてから、違和感を覚える。何が、と問われても明確には答えられないけれど、強いて言うなら――

 朝食の準備を始めようとキッチンに立ったところで、カウンター越しにダイニングテーブルが目に入った。その上に覚えのない紙切れが置かれている。

 瞬間、物凄い速さで心臓が音を立て、気が急く。
 慌ててその紙を手に取れば、鈴木先輩の角ばった文字がやや荒々しく並んでいた。


『華へ

 昨日は悪かった。お前の気持ちを考えずに投げ出したことは、謝っても許されないと思ってる。本当にすまない。

 俺はここを出る。今の華にとって、俺と一緒にいるのは最善じゃない。

 華はこのまま母さんが帰って来るまで住んでもらって構わない。お前のことは隣の伊集院さんにも話してあるから、何か困ったら頼るといい。金銭面も心配するな。』